「このお部屋にするの?
ロルフさんに言われて、お姉さんたちにジャンプの魔法を見せる事になったでしょ?
だから飛んでく先の登録をする事になったんだけど、そしたら二階にある貴族様のお部屋になるはずだったとこに連れてかれたんだ。
「うむ。先ほども言った通り、ライラにはこの階の客室の一つを使わせる事にしたじゃろう? じゃがここはルディーン君の家になるのじゃから、その部屋はライラが使う物よりも格が上でなければならぬのじゃよ」
ストールさんはロルフさんちの偉いメイドさんだけど、このお家は僕が買うでしょ?
だからストールさんが使うお部屋より僕が使うお部屋の方がすごいとこじゃないと、ロルフさんちからお勉強に来るメイドさんや執事さんが困っちゃうんだって。
「この場合、入口近くにある来賓用の客室をルディーン君の部屋にしても良いのじゃが、そうなるとルディーン君がいつこの館を訪れても良いようにあちら側にメイドを配置せねばならなくなるからのぉ」
「そっか。ここだったら、すぐに僕が来たって解るもんね」
このお家の入口の方ってすっごいお部屋ばっかりだから、普段は使わないんだよね。
なのに僕のお部屋をそっちにしちゃうと、わざわざ奥の方まで来てストールさんに来たよって言わないとダメだもん。
それだったらロルフさんの言う通り、このお部屋を使った方がいいよね。
「それにのぉ。ここはわしの別館でルディーン君が使っておる部屋と同じくらいの広さであろう?」
「あっ! そう言えばおんなじくらいの広さだね」
そう言われてもういっぺんお部屋の中を見てみたんだけど、そしたらほんとに僕がいっつもジャンプで飛んでくお部屋とおんなじくらいの大きさだったんだよね。
ロルフさんはね、今僕が使ってるお部屋のお掃除とかをしてくれてるメイドさんにこのお部屋も担当してもらおうと思ってるんだって。
「うむ。家具の配置などは流石に異なっておるが、ここであればあの部屋を担当しておる者も違和感なく部屋を整えることができるじゃろうて」
「いっつもお掃除してるとことあんまり違うと、メイドさんも困っちゃうかもしれないもんね」
ロルフさんちのお部屋、いつ僕が来てもいいようにってメイドさんたちがいっつもきれいにしてくれてるんだよ。
そんなメイドさんたちがお掃除しやすいって言うんだったら、僕もこのお部屋を使った方がいいようねって思うんだ。
と言う訳で貴族様のお部屋だったとこにジャンプの転移場所を設置する事になったんだけど、僕はそこである事に気が付いたんだ。
「あっ! ロルフさん。ここ、やっぱりダメだよ」
「どうしたのじゃ? この部屋に何か、魔法を使う上で不都合な事でもあるのか?」
「ううん。そうじゃなくて、ここに飛んできちゃうとずるっこになっちゃうんだ」
イーノックカウはね、街に入る時にお金を払わないとダメなんだ。
ロルフさんちから来る時は特別にお金を払わなくってもいいよって言うのをもらったからいいけど、あれはロルフさんちから街に入る東門でしか使えないって言ってたもん。
だったら直接このお家にジャンプで飛んでくると、それはずるをしてるって事になっちゃうって僕は思ったんだ。
でもね、それを聞いたロルフさんは、そんな心配しなくってもいいんだよって言うんだ。
「ルディーン君は、イーノックカウの居住権を買う事になっておるじゃろ?」
「うん」
「入街料と言うのはな、この街に住む権利が無いものが訪れる時に支払うものなのじゃ。居住権を持っておるのじゃから、これからはイーノックカウに入るのにそのようなものは必要なくなるのじゃよ」
今まではグランリルから来た億役さんだから、イーノックカウに入るのにお金を払わないとダメだったそうなんだ。
でも居住権ってのを買ったから、これからは入り口で冒険者ギルドのカードを見せるだけでお金を払わなくってもよくなるし、このお家に直接ジャンプで飛んでもずるにならないんだって。
「それとな、今度親御さんや兄弟と一緒にこの街を訪れた時は冒険者が錬金術のギルドに必ず立ち寄るのじゃぞ」
「なんで?」
「それはのぉ。ルディーン君の家族も登録さえすればそれ以降、この街に入るのに金が必要とならなくなるからじゃよ」
居住権ってのはね、家族のうちの誰かが買ったらみんなもらえるんだって。
だから今度来た時には僕の家族だってことを知ってる冒険者か錬金術のギルドに来て、自分のカードに居住権の登録をしなきゃダメだよってロルフさんは教えてくれたんだ。
「そっか。じゃあ、絶対に行かないとダメだね」
「うむ。それにのぉ、居住権を持っておるとこの周辺で何かが起こった時も、門で煩わしい検問を受けずに済むようになるのじゃ」
こないだ家族でイーノックカウに遊びに来た時、途中で何とかって言う悪もんをやっつけたでしょ?
あんなのが近くに出るようになると、悪もんが街に入ってこれないようにって門の所で兵士さんたちが一人一人調べるようになるそうなんだ。
でも居住権ってのはずっとこの街に住んでるか、今回の僕みたいに偉い人にこの人は大丈夫だよって言ってもらった人しか持ってないから、普段は偉い人しか通れない特別な門を通って入れるようになるんだってさ。
「へぇ、そんな事もあるんだね」
「まぁ、そのような事態はこれからしばらくの間、起こるような事は無いじゃろうがな」
悪もんが全然いないって事は無いんだけど、イーノックカウの兵隊さんは優秀だからすぐに捕まえちゃうんだって。
それにそんなイーノックカウの兵隊さんでも捕まえられなかった何とかって言う悪もんたちも、こないだ僕たちがやっつけちゃったもんだからもうちょっとの間は門のところでそんな事をする事は無いんじゃないかなってロルフさんは言うんだ。
「なにせ土蜘蛛ほどの大物をルディーン君たちが捕まえてくれたのじゃ。悪人には悪人の情報網というものがあるからのぉ。捕らえる事が難しい名の知れた賊が捕まったとなれば、その街に近づこうと考えるものはあまりおらぬじゃろうからな」
そう言えばあの悪もん、そんな名前だったっけ。
ロルフさんはね、その土蜘蛛ってのが捕まったから、これからちょっとの間はこのイーノックカウの近くに悪もんがいっぱい来る事は無いと思うよって。
「そう考えるとルディーン君一家は、この街に多大な貢献をしてくれたという事じゃな。わしからもお礼を言うぞ」
ロルフさんはね、そう言うとにっこり笑って僕の頭をなでてくれたんだ。
本当はジャンプの魔法陣設置と実演までやるつもりだったのですが、過去の話を読み直したら直接ジャンプでイーノックカウに飛ぶのは問題があるんじゃないかとルディーン君がいう場面を見つけたんですよね。
実を言うとこれは居住権取得を考えた時点でクリアになる事は決まっていたのですが、そう言えばそれを説明する一文を入れていなかったミスに気が付いて慌ててこの話を差し込むことになりました。
家を買うついでに話していればほんの数行ですむ話でも、忘れると1話分使って説明をしなくてはならなくなる。
こんなだから私の書く物語は展開が他の方のものより遅くなってしまうんでしょうね。